「ぶっちゃけ、絵コンテくらいなら素人でもできるんじゃね?」素人vsプロ対決!
広告やWebサイト、パフレットなどに漫画を取り入れるとき、自分で絵コンテ(漫画の場合、絵コンテのことをネームと言います。)を描かれる人もいらっしゃるのではないでしょうか。
「自分は絵の専門家ではないけど、ネームくらいなら何とか…」
「いやいや、たとえネームでもプロに描いてもらった方がいい!!」
こんな不毛な争いに終止符を打つために、今回は知り合いのディレクターとネームライター(漫画のネームを専門に描くライター)に頼んで、こんな企画をやってみました。
「素人」vs「プロ」!
同じネタからネームを描いた際に、どれほど違うものができるのか?
はたまた素人もネームライターも関係ないのか!?
【人物紹介】
高橋 龍輝(たかはし たつき)
クリエイティブディレクター兼ネームライター
〇最近はまってるもの
お惣菜コーナーの鶏肉系食べつくし
〇最近気になってるもの
都内の唐揚げのおいしい店
〇その他
チェーン店の方が唐揚げがおいしかったりする
井田 峻平(いだ しゅんぺい)
営業兼ディレクター
〇これだけは誰にも負けないってもの
マンガ愛
〇最近気になってるもの
携帯は格安SIMがいいのか,大手通信会社がいいのか
〇その他
無理なダイエットは体調を崩すからやめた方が良い
B村
クリエイティブディレクター兼爆速ネームライター
〇最近はまってるもの
アルバムをランダムに借りてきてランダム再生
〇これだけは誰にも負けないってもの
黄色グッズに対する愛情
〇その他
未来永劫焼肉ランチ無料券が欲しい
【対決開始】
高橋 「第1回目は「ストーリーの構成力」を競ってもらおうと思います。広告マンガ制作に必要なキーワードのみをお伝えいたしますので それをもとにネームを描いてみてください」
高橋 「素人代表の井田さん、自信のほどはどうですか?」
井田 「正直かなりあります!」
B村 「お!」
井田 「なんたって僕はスゴイ量の漫画を読んでますからね」
高橋 「井田さんは弊社でも屈指のマンガ読量率を誇りますもんね」
井田 「最近はコマ割りについても研究しながら読んでますよ」
高橋 「つまり、ただの素人ではないと?」
井田 「そうですねとんでもないものが出来上がる可能性ありますね(最近はlineマンガで湯水のように金を使い、読み漁ってますしね)」
高橋 「素人代表がこんなこと言ってますが、ネームライター代表としてB村さんはどうですか?」
B村 「いつも通りやろうと思います」
井田 「めっちゃ強そう!!」
高橋 「めっちゃ強そう!!」
井田 「スポーツ漫画における強豪感がすごい!」
高橋 「逆に井田さんに小物感がでましたね」
【案件の説明】
高橋 「お二人にはこのチラシをもとに、ネームを制作して頂こうと思います」
高橋 「商品名は「きびだんGO」といいまして、「商品を与えた側」のイメージや考えを「与えられた側」に一瞬で共有できます。ついでに軽い洗脳もできます(2時間で考えました)」
B村 「何それw」
井田 「なるほどね、すげー欲しいわw」
B村 「漫画とかいらないじゃん商品力の勝利だよ(あれ…これドラ〇もんであったような)」
高橋 「ではルールの軽く説明をします!
広告漫画は、ターゲットに漫画を読んで商品やサービスに興味を持って頂き、問い合わせや購買につなげることが使命です。
クライアントから共有される内容は、紹介してほしい商品やサービスの詳細とメインターゲット・広告の方法(web・パンフレット・小冊子など)・広告効果のねらいなどです。それらを満たす漫画を考えます。さらに、サービスがどんなものか、利用者にどんなメリットをもたらすのかを調べ、クライアントの立場も考えてネームを考えてください。」
【案件内容】
〇商品名 :きびだんGO
〇企業名 :ブラック鬼が島社
〇読者ターゲット :中小企業の経営者
〇商品情報
・食品・食べると脳内の共有・軽い洗脳ができる
・商品を与えた側が持っているビジョンを、商品を与えられた側に簡単に共有できる
・商品を与えられた側は、与えた側を崇拝するようになる
〇商品使用例
社長やリーダーが自分の持っているビジョンを効率的に伝えるために、経営者が社員を自分の会社のファンにするために
〇判型
A4チラシ(両面印刷)
〇漫画の目的
・まずは全国の中小企業に向けてDMを送る。
・現状のチラシを裏面とし、その表面にマンガを入れたい
・キャッチーな漫画を入れて、裏面に誘導したい
高橋 「あるある的な漫画があるといいですね。漫画を読んで商品について興味を持ってもらい、裏面に誘導していただきたいです。」
B村 「漫画はあくまでフックにして、漫画内に商品の説明はなくてもいいってことですか?」
高橋 「そうです」
井田 「なるほどもう見えました!あーもう、あとはどうコマを割るかだなー」
高橋 「提出〆切は素人の井田さんに合わせようと思います。いつがいいですか?」
井田 「じゃあ2日後で!」
高橋 「かしこまりました!よろしくお願いします!楽しみにしております!」
3日後~
高橋 「みなさんお気づきかと思いますが、井田さんが自己申告した2日ではなく3日後に提出してきました」
井田 「すみません」
井田 「いやーもうほんとに、いろんな漫画を見てきてその能力を総動員したかったんですよ。 でも1Pという制約がかなりきつくて、ネームライターはよくこんなことできるな」
井田 「頭の中でシナリオは浮かんでくるんですけど、まとまらなくて…」
高橋 「井田さん、シナリオがまとまってから漫画ができるまでにどれくらい時間がかかりましたか?」
井田 「トータル4時間くらいですね」
高橋 「ちなみにB村さんは30分だそうです。しかも、次の日には提出してくれました」
井田 「信じられない」
高橋 「さっそく、井田さんのから見てみましょう!」
高橋 「ワンピースじゃんw」
B村 「ゾロで見た気がw」
井田 「まず商品自体が万能で魅力的だったので、商品にストーリ―をつけるのではなく、使用シーンを見て実感してもらいながらも面白いものを作ろうと思いました」
高橋 「なるほど」
B村 (爆笑中)
井田 「シーンをしぼろうとしたきに、最初は「無駄な会議を確実になくす食べ物があったら欲しいと思いませんか?」というのを考えました」
井田 「団子さえ食わせれば全員に一瞬で意識共有ができるので、会議中にチームメンバー団子を食わせて、全員がそのアイデアで動いていくような漫画を考えました。ただ、表現しきれなくてあきらめました」
高橋 「画力で断念したところがあると?」
井田 「めちゃめちゃ断念しました」
井田 「最初に描いていた漫画は3人の部下がそれぞれ別なことを一気に取り組むシーンを描きたかったんですが」
B村 「1Pでメインキャラが4人いるのは多いですね」
井田 「そうなんですよ!なので2人での商品使用シーンとして「採用」で描きました」
高橋 「なるほど。これはもう、ブラック企業的な要素は隠さない方向性にしたんですね」
井田 「そうですね」
井田 (笑)
井田 「天才のキャプションで天才キャラにしました」
高橋 「漫画ならではの表現だけど、広告というよりエンタメの演出法ですね(笑)」
B村 「まぁまず天才は採用の面接にこないよね」
井田 「そこを突っ込まれたら終わりですね」
<高橋からの総評>
マンガを読んでるだけあって、最初にインパクトがあるコマを入れたり、素人がやりがちな、顔だけマンガにならないように引きのシーンを入れたりと、かなり「わかってて」作ってるのは伝わりました。
ただ、妥協したところが多く、作っているうちに「何のためのマンガなのか」というところからずれてしまったのがもったいないです。
でも、本人の言う通り「ただの素人」ではないですね。
高橋 「次にB村さんのネームです」
高橋 「これは「ザ・王道ですね」」
井田 「すげー!これはどうやって作ったんですか?」
B村 「まず、マンガとしての面白さはもちろんなんですが、マンガを読んだ人に「何を伝えたいのか」っていうのを忘れちゃいけないなっというのがあって」
B村 「「社長が抱えている課題」というのはマスト要素として入れました」
高橋 「なるほど」
B村 「社員はポリシーを「覚えていない、もしくは賛同していない」という状況。社長は賛同してほしいのでどうにかしようと、教材などを調べると思うんです。でも社員全員に、教材やセミナーを受けさせるにはかなりコストがかかる。そういったあるあるなお悩みを漫画に入れて「こんなことありますよね」と共感させて、商品に興味をもたせる。という作りにしました」
井田 「おぉ!」
B村 「マンガ的な面白さは「表情」や「構図」とかで表現するようにしました」
高橋 「最初私のオーダーが「あるあるネタが欲しい」としてたので、そこをきちんとくみ取っていただけた感じですね」
高橋 「B村さんのネームのポイントは、マンガで「成功」まで描いていないというとことですね」
B村 「そうですね。井田さんが言うように、今回は「商品力」というがかなりあるので、マンガの役割は裏目に誘導する、ということに注力しました」
高橋 「井田さんのマンガは解決まで1Pにまとめるという構成の仕方でしたが、B村さんはお困りごとを丁寧に描くという構成の仕方でしたね」
井田 「僕の全然困ってないですね(笑)」
高橋 「成功パターンを見せるというやり方もあるので、間違いってわけではないですよ。「成功している会社はこんなことしてるんだよ(こんな秘密がある)」という見せ方であればよかったです」
高橋 「ただ、社長がいっこも困ってないのは「あるある」というオーダーからすこしずれてますかね」
【まとめ】
高橋 「じゃあ井田さん!今回やってみてどうでしたか?」
井田 「いろんな漫画を見てきたので、いろんな演出を思いつくことはできました。しかし「1Pにまとめる」というが非常に難しかったです」
井田 「また、シナリオはいくらでも思いつくのですが、実際の絵になったときにどう描いたらいいのかわからなかった」
井田 「お団子をたべるところも、どう表現すればいいのかでかなり悩みました。「あ~ん」ってしてるところ入れた方いいのかとか、手に取るところ入れた方がいいのかとか。 最終的にに「パクッ」ってすればいいのかと気づくのに30分くらいかかりました」
井田 「や―しんどかった!ネームライターはよくこんなことササッとできるな、と思いました」
高橋 「いやーいい感じのコメントありがとうございます!」
高橋 「私の思惑通りにいってよかったです。これで井田さんのネームめちゃくちゃうまかったらどうしようかと思ってましたもん(笑)」
B村 「私もすこしビビりました、ネームライター辞めることになるかと」
井田 (笑)
井田 「くそー悔しい(笑)」
<結論>
ネームライターは「内容を規定のページ数にまとめたり、実際の構図を想像したりする力」が素人とは違った。
第二回は「シナリオからネームを描き起こす」という企画にしようと思います。
今回はネタの構成についても触れてたのですが、次回は完全に「コマの構成力」を見ます。
ネームからプロに依頼されたい方は、ぜひこちらも併せてご覧ください。
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